いわき市立美術館 Iwaki City Art Museum

1984年、福島県いわき市の街中に開館。戦後の現代美術を主な収蔵品として、コンパクトながらパワフルな活動を展開しています。日ごろのあれこれを発信中!

三賞受賞作(絵画・彫塑の部)

市美展絵画・彫塑の部、三賞受賞作を紹介します。
また、それぞれの作品についての、審査員・南嶌宏氏(美術評論家女子美術大学教授)の講評を出品目録から引用します。


いわき市長賞 久保木 舞《紡ぎ歩く》
いわき市長賞の久保木舞さんの「紡ぎ歩く」は繊細な紙粘土によるによるクラフトオブジェですが、軽やかでポップな造形とパステル調の彩色が寓意的な地図の上で溶け合い、その何気ない足跡に潜む、不思議な切なさまでも湛えるすぐれた作品でした。「紡ぎ歩く」というタイトルも詩的な響きを持ち、作品の質感の重要な要素となっています。



いわき市議会議長賞 森 二郎《あの日の海を憶う。》
■議長賞の森二郎さんの「あの日の海を憶う」は海に消えた命の記憶と自らの人生の記憶を静謐の青の中に重ね合わせた、鎮魂の詩の形象といえるでしょう。記憶の深部に生き続けるであろうあの日の色、あの日の形、あの日の匂い、あの日の声、そして気配。永遠に忘れてならないものを記す地平を絵画と呼ぶならば、この作品はまさにその覚悟に対するひとつの答といえるかもしれません。



いわき市教育長賞 大平 遼《少年》
■最も嬉しい若き才能との出会いのひとつが議長賞、16才の大平遼さんの「少年」でした。解決不可能な事象として「3.11」に対峙する自画像でしょうか。戦争という不穏な怪物の前に立つ、あの松本竣介の「立てる像」(1942)を彷彿とさせる、もうひとつの「立てる像」。少年の武器はヨットパーカーとスケボーだけです。しかし、怒りを抑えながらも、不可能性を突破しようとする少年の決意を重く、そして嬉しく受け止めました。

展覧会は2月9日(土)からです。お楽しみに!