上村清雄先生の講演会で、質問をしてみました。
問)クロチェッティ彫刻の表面にたくさんついている四角いもの(パッチ)は何ですか?
答)ろう型ブロンズ鋳造時にできる湯道をふさいだ跡とは別に、彫刻の表面に変化をつける(マチエール)ための装飾だと考えられます。彼は、ローマの美術修復研究所で働いた経験があります。修復作業では、四角に切った日本の和紙を貼りつけて使っていましたが、その光景からヒントを得た部分があるのではないでしょうか。
もうひとつ考えられるのは、古代のブロンズ彫刻には鋳損じが多いため、亀裂が入ったり破損した部分にはめ金をしますが、それによってできた表情からも着想を得たと想像できます。
上村先生、中村義孝筑波大教授(講演会に参加されていました)、
お答えいただきありがとうございました。
あらためて、作品の形だけでなく表面の隅々までながめる楽しみが増えた気がします。
このほかにも、こんな質問がされました。
問)同じブロンズ作品なのに、それぞれ色味が違うのはなぜですか?
答)鋳造の仕方で変わるので、鋳造所が違うと色味も変わってきます。酸で洗って緑青を
吹かせたり、色をつけたりもします。ただ、現代では、環境汚染が酷くなり、きれい
な緑青が吹かなくなっています。残念です。
問)《マグダラのマリア》は、誰の依頼で制作されたのですか?
答)自分自身のために制作しています。クロチェッティのテーマとして、宗教美術はとて
も重要なものでした。彼は具象彫刻家ですが、抽象美術を否定するどころか認めてい
ました。しかし、こうも語っています。「抽象作品が宗教世界を表現できるのだろうか?
もしできるのなら、私も抽象彫刻で表現するかもしれない。」